田中さんと今日で別れてしまう。 家庭の事情で急きょ山梨に一時帰宅をしなければならなかった。


2日後に金沢に戻って再出発するそうだ。

理由はなんにせよ、旅を中断することはモチベーションが下がってしまうし、何よりも出発地点に戻らなければならないことが辛いことだと思う。

ゲストハウスに貴重品以外のすべての荷物を預かってもらい、朝早く山梨へ戻っていった。

11時にゲストハウスを出て、知人の真里さんと金沢駅で待ち合わせた。

時間通りに出会い、早速移動を始める。

真里さんは朝からテンションが高く常にしゃべっていた。

この後わかることだけど、別れる夜までテンションは変わらずにしゃべり続けていた。

どこからそのエネルギーが湧いてくるのか不思議に感じる。

だけど溢れ出したエネルギーが俺に伝染するから元気がもらえる。

周りの人を明るくすることが出来る人はすごいと思う。

駅を離れたはいいが全くプランを考えていなかったので、真里さんを頼りに金沢の散策2日目をスタートした。

一日周遊きっぷを買い、ぐるっと金沢の観光要所を巡る周遊バスに乗った。

歩けば10分足らずの場所に50分かけてバスで移動した。

気ままな一日の始まりだ。

観光名所である東茶屋街を散歩する。

ぶらりぶらりと金沢を巡るだけでも癒される。

歩き疲れたら喫茶店で休憩し、また違うエリアにバスで移動する。

同じような茶屋街に行ったり気になったお店に入ったり、何気ない行動が新鮮だった。

夕飯を食べにターバンカレーに行き、またカレーを食べた。

こちらのカレー屋もうまい。

別れた人を思い出すとき、どこで出会ってどんな場所に行ったかよりも、どんな会話をして何を感じて何を受け取ったのかを覚えていたい。

形のないものだけど出会った人の温かさは体に残っている気がして。

洪水のようにしゃべり続けた一日も終わりを迎えようとしていた。

お世話になったお礼をするために一度ゲストハウスに戻り、ギターを抱えて駅の方向へと歩いた。

自分にできるお礼は歌を歌うこと。

「また会いたい、必ず会いに来るよ」という気持ちを込めて『再会』を歌った。

歌詞に込められた感情が、声によって情景に溶け出して、二人がいる空間は切ない世界へと変わる。

歌い終わった後も余韻はすぐに夜闇に吸い込まれることはなかった。

また会おう・・・

金沢駅で別れの挨拶を交わし、俺はギターを抱えてゲストハウスの方向へと歩いて行った。


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