朝を迎えた時点では、台風の影響は一時的な雨と吹き返しの風だけになっていて、空模様は落ち着きを見せ始めていた。


8時にチェックアウトをして、早めの時間に自転車を漕ぎだした。

路側帯を走ることがトラウマになってしまい、風が強い今日は白線より内側を常に走るようにした。

昨日の進めなかった距離を稼ぐ必要があったため、休憩を入れるスパンを長くとり30km毎に休憩を挿むサイクルで走った。

今日の目的地はかなり遠い。

敦賀市も福井市も東尋坊も素通り。

昨日の一件がなければ観光をする余裕があったのかもしれない。

無理をしてまで走り続けるには理由があった。

金沢市に入る前にある人と合流をしたかったからだ。

5日前から連絡を取り合い、お互いの進捗状況と何日に合流できそうかをおおよそ見積もって、今日がそのラストチャンスだったのだ。

昼を過ぎると気温は35℃まで上がり、空は雲一つない晴天になった。

台風一過の照りつける日差しがあまりにも強く、熱風がみるみるうちに体力を奪う。

8時間以上走り続け、やっと目的の道の駅に到着した。

キョロキョロと道の駅を見渡すとトイレの壁に自転車が立てかけられていた。

どうやら無事に合流が出来たようだ。

長崎で出会った自転車日本一周中の田中さんだ。

田中さんは俺より2日前に福岡を出ていて、京都市や滋賀県などの内陸も回っていた。

47都道府県制覇も目標の一つとしている。

ベンチに座り、長崎以降の出来事をお互い話したり今までの旅を振り返ったりして、全国各地の地名が飛び交っていた。

そんな会話の中、田中さんから「長崎で会った時よりも凄くテンションが低いね」と言われた。

それは図星で、自分でもテンションの低さを自覚していた。

本州に戻ってから旅を楽しめていなく、辛い部分が増して心を支配している気がした。

体調不良やマシントラブルが引き金になって旅の疲れがドッと押し寄せてきたのかもしれない。

「ここが踏ん張り時だ。この先、楽しいことは山ほどあるよ。落ち込んでる暇なんてない。楽しくいこうよ」

田中さんは、自分も大変な旅をしているにも関わらず勇気づけてくれた。

23時近くまで話し込み、並んでテントを張って眠りについた。

人は人に救われる。

 
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