雨の降る心配をよそに、澄み切った空が広がっていた。


天気予報は本当にあてにならないな。

朝のまだ気温が上がらない時間に、軽くシャワーを浴びてギターをビーチでぽろぽろと弾いた。

そんな土曜日の朝。

今日は移動距離が短いからどう時間を潰すかな。

玄海灘を博多方向に進み始め、寄り道ができる場所を探した。

都心に近付いてきていることもあり風景は住宅街へと変わっていった。

10時頃にマックに入り、それからはLサイズのコーラ片手にPCをいじる。

俺は全国のマックに来店しているんじゃないか。

学生時代から旅に出る直前まで週1でマックに通っていた。

マックの味が最も慣れ親しんだ味なのかもしれない。

12時を回ると店内は高校生の集団でごったがえす。

10代の発生させるエネルギーが充満し、今にもマックが爆発するほどざわめきだした。

全国どこに行ってもこの光景は変わらない。

ひっそりと隅の席に座り、高校生たちの会話に耳を傾けていた。

くだらない話の馬鹿さ加減がとても好きだ。

太陽の熱をうんと蓄えたアスファルトはうねるような暑さを生みだす。

駐車場で苦虫を噛み潰したような顔を浮かべていると、話しかけてくれた男の人、タカオさんがいた。

この暑さの中、これから海に日焼けをしに行くらしい。

以前に自転車で九州一周をしたようで、日陰に入りながら旅の話に夢中になった。

体の心配をしてくださりありがとうございます。

スーパーに立ち寄り日陰で涼みながらコーラを食道に流し込む。

コーラにうってつけの日だ。

炭酸のはじける刺激が気だるい脳みそに爽快感を与える。

夕方の5時まで時間を潰して、ニッチーさんと博多駅で再会を果たした。

広島のバックパッカーズで知り合った方で、あれから40日近くも経っていて、ここまでの長い道のりが頭に浮かんだ。

いよいよ九州の旅も終わりに近づき、博多を最後に本州へと戻る。

ニッチーさん宅に荷物を置かせてもらい、夜の博多の街へとくり出した。

祇園にあるニッチーさんの行きつけの店へと連れていってもらい、盃を交わす。

店内は白を基調としたおしゃれな雰囲気で、少人数のアットホームな店だ。

コースを注文し、栄養のバランスとスタミナをポイントに皿がどんどんと運ばれてくる。

料理の美味しさもさることながら食材にもこだわりがあり、マスター自らが今日の朝に仕入れた野菜を調理し提供してくれる。

油っこくないサクサクのチキン南蛮、食材の新鮮さを生かした温野菜。

どの品を食しても美味しい。

提供される料理だけがこの店の看板ではない、マスターの人柄やスタッフのフレンドリーさが、飲みの場の空間を和やかな空気にしている。

東京ではなかなかこんな店は見つからないと思う。

ニッチーさんも言わく、博多でも珍しいそうだ。

宴もたけなわになり始めた頃、ニッチーさんのはからいで、「日本一周頑張れ!!」の乾杯をみんなでしようということになった。

店にいたお客さん全員でグラスを天井に届くように上げ、満面の笑みで乾杯をする。

あんなに楽しくグラスをぶつけ合い、「イェーイ イェーイ」って言ったのはいつぶりなんだろう。

恥ずかしながらも乾杯の挨拶として、全員の前で自己紹介を兼ねてスピーチをしたのは今思い出しても笑えてしまう。

博多の人は人情味があって温かい。

その温かさに触れた瞬間、目頭が熱くなり、涙を流してしまった。

肩を抱き合ったこの日を決して忘れることはないだろう。

一期一会をこの旅で何度となく経験してきた。

そこには大きな喜びと微かな寂しさがある。

明日の日が昇った時には出会った感動の熱が冷めしてしまう。

夢を見ている間に思い出は、角が削られ滑らかなものになってしまう。

俺はそうやって旅の道を前へ前へと進んでいかなければならないんだ。


o0800060011340822705