早朝から散歩に出かけ新鮮な空気を吸う。


心を落ち着かせることが出来る夕方の散歩と違って、沸々と希望が胸に湧いてくる。

ラジオ体操の歌詞がぴたりと今の気持ちを表している。

小高い丘から南阿蘇を一望し、ストレッチと太極拳まがいの動きをする。

体はだんだんと熱をおびてきて、精神と体のエネルギーが一体となる。

なんて気持ちいい朝なんだ。 久しぶりのすがすがしい朝を迎えていた。

※ラジオ体操の歌詞

新しい朝が来た 
希望の朝だ
喜びに胸を開け 
大空あおげ
ラジオの声に 
健(すこ)やかな胸を
この香る風に開けよ
それ 一 二 三

新しい朝のもと 
輝く緑 さわやかに手足伸ばせ 
土踏みしめよ ラジオとともに 
健やかな手足
この広い土に伸ばせよ
それ 一 二 三

阿蘇山の登山を敢行するため、ゲストハウスを6時半には出発した。

山の中腹の温泉まで自転車で行き、そこから登山道を登って行くすんぽうだ。

傾斜が30度はあると思う急斜面を6kmぐらい一気に登る。

いくら空気が冷たいといえどもじんわりと汗がにじんでくる。

温泉がある中腹に辿り着き、登山道のある入口を目指すといやーな雰囲気の看板が立っている。

「この先 がけ崩れのため全面通行止め」 なに言っちゃってるかなこの看板は。

ここまで登ってきてこの仕打ちはない。 麓に看板を出しなさい。

朝のすがすがしい気持ちはどこへやら、煮えたぎる怒りが心にこみあげてきた。

どうしようか・・・車の登山道から登るしかしようがない・・・

一旦降りてから再度登るという地獄。

元来た道を引き返すのはしゃくだったため、登山道の入り口の脇にあった道を通ることにした。

道はボコボコだし、雑草ボーボー。 獣の糞がひっきりなしに点在していて、全く人の手が入っていない。

多分、廃道なのだろう。 いるはずのない熊を心配し、ビクビクしながら坂を駆け降りた。

麓まで戻って再出発。 登頂まで10kmはある長距離の登りが始まる。

阿蘇の山は木があまりなく山肌を草が覆っている。

爽やかな黄緑色の草が美しく太陽に照らされていた。

山上は草千里が浜と呼ばれるように、見渡す限り草原が広がっている。

太陽と雲が演出する草原の緑の明暗が美しい。

火口方向に自転車を進め、火口付近まで歩いて登ることにした。

間近に迫ると草木が全く生えていない砂地が現れる。

風の音も聞こえない無音の世界。 風は自分では音を奏でることが出来ないんだね。

風が何かにぶつかって、ぶつかった何かが「痛てーな」と言っている音が風の音。

火口の湯だまりからはもくもくと湯気が立ち上り、活火山の呼吸を肌で感じることが出来る。

火口から下りると今度はもともと火口であった草千里へと足を運んだ。

直径約1㎞の円形の草原が広がっている。

草原には、牛や馬が放牧されており、大きな池に水を飲みにやってくる。

今日は牛は放牧されていないようだ。

草原を見渡せる丘に登り、バックを枕にしてしばし寝ころがる。

草原を吹き抜ける風と鳥のさえずりが眠気を誘ってくる。

このまま誰にも邪魔されずそっとしておいてもらおう。 時間はゆっくりある。

1時間も寝ていただろうか、気づいた時には空を雲が覆い始めていた。

そろそろ下山する頃合いかな。

起き上がり自転車にまたがって坂を駆け降りる。

木が生えていないだけでこんなにも視界がひらけるんだね。

阿蘇のすみずみまでが眼下に見え、くねくねと降りていく。

麓まで降りた時、空にたまっていた水が地上へと落下してきた。

ゲストハウスまで数kmの距離まで来ていたので、のんびりと雨が弱まるまで駅のホームで読書に耽った。

南阿蘇は田舎暮らしを求める人の別荘や移住が多いみたいで、シックなログハウス風の新築の家が建ち始めていた。

俺もこんなスローライフをいつかしてみたい。

雨の中、田園の手入れをしている農夫を見てふっとそんなことを思い立った。


o0800060011322858527