朝の7時に二人を見送り、誰もいない部屋に帰ってしばらくボーっとしていた。


一日ゆっくり過ごそうと思い、笹谷くんと10時過ぎに待ち合わせをし行動を共にした。

行きたい場所は白谷雲水峡なんだけど、雨量によっては予定を変更しようかと悩んだ。 とりあえず雲水峡まで車を走らせ天候を見てからアタックをすることにした。

車で山を登り始めるとものすごい大雨になってきて、本当に行けるのかと不安になりつつも登山口の駐車場に到着した。

白谷雲水峡はもののけ姫の舞台のモデルとして有名な場所で、きれいに苔がむした森を見ることができる。

昨日、一昨日と登山していることもあってか登山に慣れ始め、とび職のようにサッサっと石の上を飛び移った。

雲水峡の道は、ほぼ山道で、縄文杉ルートの最後の道がずっと続く感じだ。 何回か川の上を通過しなければならない箇所があるため、増水する前に登山口まで帰ってきたかった。

1時間半で頂上の太鼓岩に到着した。 最後の方は傾斜がきつく息を切らして登った。

太鼓岩から見る景色は絶景。 ちょうど霧もはれ、目の前のパノラマが現れた時には絶句した。

屋久島のクライマックスはここだったのかな。

しばらく岩の上に座り、霧がかかってきた段で下山を始めた。

遠くから雷の音が聞こえ、下山を始めて数分でまた大雨が降り始めた。

山道のいたる所が小川と化し、斜面をものすごい勢いで水が流れていた。 沢を下っているのとまるで同じ感覚だ。

登山口へ戻った後は時間もあったため、車で島一周をすることにした。

目的の白谷雲水峡を登山してしまった俺は、大雨だったせいなのだろうけど、この時点で燃え尽きていた。 テンションが勢いよく落ちていた。

この日屋久島は1時間に50ミリという豪雨に襲われ、車移動でなければ痛い目に合っていたことは間違いないだろう。

島を一周するのに大体3時間はかかる。 昨日行けなかったいなか浜や、安房の反対側にある原生林道を通った。

笹谷くんも疲れていたので、 早めに夕食を食べに行き、二人ともゆっくり休むことにした。

夕食はおなじみのレストランに入り、無論、飛魚のから揚げ定食を注文した。

2日間、共に行動をしてくれた笹谷くんとは、宿の前で別れ、最後の夜が訪れようとしていた。

眠る前に、今までの出来事を回想しながら明日の準備忙しなくした。

俺は今、自分の年齢にふさわしい旅をしているんだな。

旅にはふさわしい年齢がある。

今この時の自分の感性を、果たして30代、40代、50代と維持していくことができるのだろうか。

決してそんなことができるとは俺は思わない。

人との不思議な出会いや、むちゃができる度合、鋭くてヒリヒリするようなむきだしの感覚。

これらの感動や興奮が、心を締め付けるような濃い思い出を生んでいく。

人にとって経験というのは大事だ。 だけど多くの経験を積むことは、逆に言えば慣れの始まりで感覚はどんどんと鈍くなってしまう。

俺は思うんだ。

今こうして旅をして、感動して興奮してることは、年齢を重ねたら味わうことができない。

経験が奪い去ってしまうんだと。

きっとすべての情景が淡く映り、心の中を流れ去っていくんだろう。

それはそれでいいのかもしれない。 でもそれは50代にとっておくことにしよう。

今の俺に必要なのはこの旅なのだから。


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