前日から今日の目的地を桜島と決めていた。


野宿をしたキャンプ場は佐多岬と桜島の中間地点に存在していて、佐多岬に行く場合は、キャンプ場まで往復してから桜島へと行くことになる。 距離を計算すると125km。

キャンプ場にお昼までに戻るには、朝の5時に出発をしなければならない。 そのため、俺は朝の4時に起床し、予定通り5時に出発することになった。

どうせキャンプ場に戻ってくるため、テントを張ったままにし荷物をごっそりその中に入れてキャンプ場を出た。

ギャンブルみたいな行為だけど、日本というのは安全な国だね。 特に地方にいくほどに。

国道から県道に入るとそこからは店という店は一切なくなり、22kmの間、たまに集落がある以外は山に次ぐ山だった。

世界の果てだな。 日本とは思えない大自然。

もちろん佐多岬付近もみっちりと山が詰まっていて、必要のないアップダウンを何べんも繰り返すのだった。

佐多岬に着くと、岬の展望台までは結構な長さの遊歩道を歩く。

岬から見る景色は異様なまでに美しかった。 心地良い日で海も光を浴びて真っ青に染まっていた。

世界の果てだな。 何にもない場所。 南の到達点としてふさわしい場所だと、水平線を見ながら物思いにふけっていた。

展望台には、俺の他に管理をしているおばさんと、ここで出会った方、ユウジさんの3人だけだった。

「ここで会ったのも何かの縁ですね」というユウジさんの一声で談話を楽しむことになった。

岬がある佐多町にはいくつかの集落があるようだけど、おばさんの住んでる集落は小学生が1人しかいなく、中学生はいないそうだ。 限界集落というやつだね。

今まで通ってきた道のりを思い浮かべると、限界集落になってしまう理由はおのずと理解できてしまう。

だけど田舎の風習や伝統、風景の維持をしていくには、そこに誰かが住まなければならない。

誰かが住み続けて欲しい。 矛盾した感情が心の中に渦を巻いていた。

色々と話す中で、おばさんの娘の旦那さんが歯の技工士をしている話題になった。

よくよく見るとおばさんの歯はほとんど無くて、皮肉な話だと後々になってユウジさんとその時の会話を思い出した。

人柄の良いおばさんで、おばさんに会いに佐多岬に来る人がいるんだそうだ。

岬を離れた後、ユウジさんにご飯に誘われた。

いかんせん店がない。 結局、22km先のスーパーまで戻って弁当を買い、また岬近くまで戻って堤防の上で弁当を食べながら話した。

綺麗な景色を見ながら食べる飯。 「弁当だってものすごい美味いな~」とお互いに笑みを浮かべながら、空きっ腹にどんどんとご飯を流し込む。

偶然の出会いにより、桜島に行くことを断念せざる負えなくなった。 だけど目的地を目指すなんてどうでもよくなる。 こうした時間がなによりも良かった。

ユウジさんと別れた後、またキャンプ場へと引き返した。

別れてから2時間は経っていただろうけど、見覚えのある車がキャンプ場にとまっていた。

海岸沿いの石階段に座って黄昏ている人がいた。 ユウジさんだった。

偶然の再会に驚き、お互い顔を見合わせて指をさしあった。

偶然というのはすごいね。 それが必然だと思えてしまう。

キャンプ場で夕食を共にし、雨が降るまで二人で黄昏ていた。


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