昨日から深夜にかけて降り続けた土砂降りのせいで2時間しか眠れなかった。


荷物と体は余り濡れずに済んだので不幸中の幸いだ。

朝の5時になると、あたりが明るくなり始めた。 ゆっくりとテントのファスナーを下すと、目の前に広がった雄大な景色に圧倒された。

雲一つない空。 朝の澄んだ空気のせいか、遠くの島々までくっきり見渡せた。

徐々に水平線から上空へと青色の濃淡が作られていて、水平線はほのかに赤みを帯び始めていた。

道路沿いに植えられたヤシの木々の姿は空の色に映えていた。

夕日と同じように一瞬しか表情を見せない空の美しい化粧が、ぼやけた感覚を一気に目覚めさせた。

これが宮崎なんだな。 見ることが出来なかった景色が目の前にあり、感動はひとしおだった。

佐多岬に向かう前に宮崎県側の岬である都井岬にまずは立ち寄ることにした。 南国らしく道の両端には亜熱帯植物が生い茂り、道のいたるところをカニが往来していた。

道路から少し離れると田園風景が広がっていて、宮崎らしい田舎ののどかな感じが心をウキウキとさせた。

静寂に包まれた暗いトンネルを走っているときに、ふと自分の今置かれている現実をかんがみる瞬間があった。

「自分はなんて幸せなんだろう」
「こんな贅沢な旅ができて」
「健康に生きてこれて五体満足で入れて」
「好きなことを好きな時にできて」
「俺は今生きているんだな」
「まさに吸って吐いてを繰り返し呼吸をしているんだ」

普段は考えもしないことを、東京から40日以上かけて九州の端っこで考えている。

自然にうれし涙を流していた。

岬に近づくにつれてアップダウンが激しくなってくる。 九州は起伏が激しい。 岬の先端までぎゅうぎゅうに山が詰まっている。

思った以上に時間をかけて都井岬に到着した。

岬付近は草原になっていて野生の馬が生息している不思議なところだ。

江戸時代に高鍋藩の軍用の馬を生産するために岬付近に牧場を設置したのが始まりで、藩が潰れても馬は生き残り野生化したのが起源となっている。

野生の馬はサラブレッドや飼育されている馬に比べると一回り小さく、痩せていた。 必死に草をむしゃむしゃと食べていて、愛くるしく、馬に寄り添うようにじっと観察をしていた。

都井岬を離れてからは鹿児島方面へ。 アップダウンを繰り返しながら走り続けた。 とてもしんどい。 峠を越えるよりもアップダウンの連続は数段きつい。

志布市の温泉に途中より、泡風呂でコリをほぐした。

コリをほぐすのに時間を使いすぎてしまい、 このまま佐多岬に行けるか危うくなってしまった。

自転車を漕ぎだして数km。 案の上、道路標識を見ると、佐多岬まで90km。

え!? 絶対無理じゃん。

佐多岬がこんなにも遠いとは考えてもいなく、計画が崩れた。 まあ計画なんてものはあってないようなもんだから。

開き直り、野宿をしようと決めたキャンプ場を目指すことにした。 キャンプ場自体も温泉から45kmあり、圧倒的な距離感。

俺は自分をクレイジーだと思った。

体がベタベタになってまで目指す必要があったのか。

キャンプ場から佐多岬まで45㎞。 なんて距離なんだ。 なんて僻地なんだ。

俺は佐多岬をクレイジーとののしった。


o0800060011290807169
o0800060011290817038