台風の過ぎ去った朝の空はまだ混乱をしている様子だった。 一面を覆った雨雲の移動は活発に北へ北へと向かっていた。


谷を通り抜ける風は時折、勢いをまして自転車ごと連れ去ってしまうぐらい強引に体当たりをしてきた。

逆風の中、進路をとることはもの凄く体力を消耗してしまう。 山から下りてきた冷気が風に乗り、体が冷えて2,3時間漕いだだけで一日分の体力を使ってしまったかのように疲労が蓄積した。

今日も行ける範囲内でお寺巡りをした。 大師堂の前では団体さんが声をそろえてお経を唱えていた。

未だに慣れていない自分には、こういう光景は異様にうつる。

お経が終われば、次の寺までバスで移動し、その寺でもそろってお経を唱える。 納経もみんなそろって。

納経というのはお堂の前で読経をした後、お寺にある納経所に写経や納札を納めることにより、自分の願いをお寺に奉られている仏様に伝える宗教儀式の一環。

それで納めましたという領収書みたいなものを、納経帳や掛け軸にサインしてもらったり印鑑を押してもらうのだ。 その印鑑とサインに納経料がかかる。

  • 納経帳にサイン・印鑑 300円也 
  • 掛け軸にサイン・印鑑 500円也 
  •  八十八か所で70,400円
  •  傘の帽子とか杖とか白衣とか順礼用品を揃えて15,000円 
  •  各寺での賽銭 15円×88 = 1320円。 
  •  歩きお遍路の場合で民宿利用をした場合 88か所周るのに50日ぐらいなので 3,500円 × 35(15日は無料宿泊所利用) = 122,500円 
  •  食費 1500円 × 50 = 75,000円 
  •  合計で284,220円

大体、安くて30万ぐらいかかるね。

現実的な話になってしまったけど、暇なのでお寺の境内のベンチで計算していた。

俺は納経をしてないのでお金はかかっていない。

お寺までの道を聞いたおばさんに 「このままだと「のうきょう」終わっちゃうわねー」と言われたことがあり、最初、農協と勘違いしていて、ん?農協の人と関係があるのか?直売店にそんなにおいしいものがあるのか? と思ったので、初めてお遍路をする人は事前によく調べ、お金かけてお遍路するのもいいかもな。

とてもいい思い出になるし、楽しいスタンプラリーの経験ができると思う。

昼下がりに差し掛かってくると、次第に風も弱まり空の雰囲気も落ち着き始めてきた。

夕方には大洲市に到着し、温泉で冷えた体と酷使した節々を癒した。

街のシンボルである大洲城の二の丸にある芝生広場で野宿をすることにした。 平日は人が皆無なので静寂だ。トイレも近くにあり、雨風をしのげる。

夕日が沈んでいく景色を高台から望め、夜はお城がライトアップされ綺麗だった。

こんな環境で野宿ができて四国はいいな。 久しぶりに野宿で熟睡できる嬉しさを胸に静かな夜を過ごした。

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