昨日は富士宮市にあるキャンプ場でテントを張り、初めての野宿を経験した。富士山をぐるっと一周し、静岡県へと入ってきた。


富士宮市は少し標高が高い場所にあり、夜の冷え込みが激しく、管理人に了承を得て焚き火をする許可をもらった。

一人、薪をくべて火を見つめていると夜の闇が襲ってくる。

外灯もない林の中で俺は孤独だった。この寂しさはきっと何日かすれば良きパートナーになるのだろうな。

薪を何本か火の中にくべてテントの中へと入った。

眠りには入ったが寒さと緊張のせいか朝の4時半には起きてしまう。

燻った火に再び薪を入れ、手を差し伸べた。もう朝はとっくに始まっていて鳥のさえずりが林のどこかから聞こえてくる。

俺も洗面所で顔を洗い、歯を磨き、朝を始めることにした。

管理人がキャンプ場に働きにきた段で礼を言い、次の目的地へと進んだ。

市街地で焼きそばを買って、ベンチに座って街並みを見ながら食べる。

商店街には鯉のぼりが何匹も泳いでいた。静かな町だった。

もちろん通りに設置されたベンチで焼きそばを食べている人なんていない。それを見ている人もいない。

ただ商店街のスピーカーから聞こえる安っぽい音が、うらびれた雰囲気を際立たせていた。

昼過ぎには、今日の目的地である友人の実家を訪れた。

お世話になる恩返しも含め、畑の草むしりや庭の剪定を手伝い午後の時間を過ごした。

久しぶりに体を動かす作業をし、校庭で必死に遊ぶ子供のように、無心で手を動かしていた。

その後、友人の家族と一緒に夕飯を頂き、待ってましたと言わんばかりに友人のお父さんと酒を酌み交わし、お説教を頂く。

お父さんは半農半公務員の生活をしている。親の代から農業を生業にして暮らしてきたので農業一本で生活していくことも考えたという。

でも農業だけで食べていくのはとても厳しい時代だ。 日本の多くの農家も兼業農家だ。

お父さんは公務員としてずっと生きてきたのだけど、数年前から自分は農業をするべきだと決意して始めた。

俺がお父さんと会話をする中で新しく気づいたことは、 「自分は何をしたらいいのか、どう生きるべきか」 という疑問は20代で抱える悩みの1つだと思っていたのだけど、50代になってもその悩みをお父さんはずっと抱き続けていること。

お父さんはそれが当然のことだと言い切った。

何歳になっても人のために自分をどう活かすことが出来るか。

新しいことに挑戦していく姿勢。きっと何歳になっても成長し続けているのだと実感した。

時が経てば忘れてしまうかもしれないけど 「日本一周したら報告しに来い」 とお父さんに言われた時には、自分の存在意義を少し理解した気がした。

若者に慕われるおやじはかっこいい。 こんな家庭がいつの日か築きたい、そう思った。


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