見事に疲労感が体から抜け切れていない。初日に無理をしたつもりはなかったけど、時間差で体の痛みが襲ってきた。2日目にして両膝に爆弾を抱えるとはお粗末な話だ。



でもそんなことは気にしてはいられない。

だって空は真っ青に晴れていて、海から吹いてくる朝の風は気持ち良かった。

前日、寝る前に今日進むルートと目的地を決めていた。 明日はどこへ行こうかな、なんて計画するのはまさに放浪しているようで、その自由さがたまらなかった。

ルートはただ、海岸沿いを走って静岡に抜けても面白くはないので、どうせなら富士山の淵をぐるっと一周したらどうかなと閃いた。

今日は河口湖までなんとしても行くと決め、峠を2つも跨ぐことになった。

自分がなぜ、体に鞭を打ってまでしんどい道を選ぶのか。苦しみから解放された後の異常な楽しさがやめられないのである。

あの峠を越えた後の下り坂。

だけど、自分の選択が旅の序盤ですることではないとすぐに気づく。 箱根の峠越えだ。

特に箱根駅伝でおなじみの上り坂は想像を絶するほどの苦痛を味わうことになった。

上れど上れど坂は続き、先が見えない。 苦しいけれど自転車からは降りられない。

坂の途中で自転車を漕ぐのをやめてしまうと、勢いが断ち切られ、再び漕ぎ出すには何倍もの力を要するからだ。

連休を利用した行楽客の車が山を登ったり駆け下りたりしている。

自然の中を走っていても廃棄ガスにまみれた空気を吸っていると虚しくなる。きっと車に乗っている人にはわからないことなんだろうな。

日が傾き始める前に2つの峠を跨ぎ、山中湖の畔へと出た。

5月だというのにひんやりした空気がまだ残っていた。

河口湖に到着したのは夕暮れ。宿はユースホステルを利用し、初めて相部屋を体験することになる。

部屋には4つの2段ベッドが設置されていて、今日の相部屋は4名。

見知らぬ人と旅の会話をすることが旅に出る前から憧れだった。 連休中のせいか家族連れも宿泊をしており、夕飯を食べながら宿泊客みんなで談話を楽しんだ。

中でも相部屋の50代の男性と20歳の男の子とは深夜までトランプ遊びに熱狂するほど他愛もなくじゃれあっていた。

これが一期一会なんだね。

会話を通して、その人の人生に一瞬でも触れる。 お互いに出会った喜びを分かち合う。

素晴らしいことだよね。

50代の男性は若い頃から旅が好きで、ユースホステルを昔から利用していたようだ。

若い頃は宿で出会った女の子と仲よくなり遠距離恋愛をしていた時期もあったそうだ。

そんな出会いは現代にはあるのだろうか。いやあって欲しい。 人との出会いがいかに自分の人生を豊かにするか改めて実感した。


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