じゃ、ちょっくら行ってくる。
ギターとバッグを背負い、旅の荷物を思う存分搭載した自転車にまたがってさっそうと漕ぎ出した。
旅立ちの門出だというのに空は雲で覆われていて、いまいち盛り上がりに欠けるスタート。
空の青さがどれだけ気持ちを左右するのかがわかる。昔の人も天候によって一喜一憂し、文明を築いてきたわけだし、自然の力は偉大なんだな。
東京を走る途中から、友人と合流。初日は見送りと共にツーリングを楽しんだ。 京浜道路を通り、横浜を抜けて湘南海岸へと出た。
途中で何回か休憩を挟むのだけど、荷物がとても重たく、しんどくてしんどくて、自宅を出てから1時間で 「あっやっぱ辞めた!!! 俺、無理だ!!」 と泣き言を漏らしていた。
膝と背中が「恐縮です。恐縮です。」と意固地になっていうことを聞こうとしないし、俺は俺で、坂を上り始めると「このままでは死んでしまう」と弱音を漏らす始末だ。
本当にこのままで大丈夫なのか? 心と体がこの先もつのか心配になったが自分には負けられない。
湘南の海沿いの風景を見ながら友人と走っていると、この先にどんな冒険が待っているのか胸が高鳴り、心配をしていた自分はどこへやら。
俺の胸は希望でいっぱいで不安なんて入る余地がないんだ。
夕方、平塚の浜辺に辿りつき、中学時代の部活終わりのようにくたくたにやられて、2人とも砂浜にぶっ倒れた。
少しの時間友人と酒を飲み、語りあった。
人と話すって本当に楽しいね。 これから一人の時間が多くなるだろうと思うとしみじみ会話することの楽しさを感じる。
とてもそれが幸せなことだと敏感に感じとれるようにもっとなりたい。
日が沈み、雨が浜辺に降り始めた。 友人と平塚駅の前で別れ、俺は宿へと避難した。
ベッドに横になると疲労感がぐわんぐわんとうなり始めた。 それが気持ち良かった。
気持ち良くて、でもうまく眠れなかった。

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